カリフォルニア大学のポール・ノフラー博士は、著書「デザイナー・ベビー ゲノム編集によって迫られる選択」の中で、この「デザイナーベビー」という言葉を用いました。同書では、遺伝子組換え技術の進歩により、デザイナーベビーの誕生が現実味を帯びてきた状況を解説しています。CRISPR-Cas9の発明により、ヒトの遺伝子編集が可能になりつつある中、安全性や倫理面での議論が不十分であることを指摘。博士は、遺伝子組換え研究の歴史を辿りながら、技術の進歩とそれに伴う議論を綴っています。さらに、優生学や文化的側面からもデザイナーベビーについて考察。人類は、すでにデザイナーベビーをつくり出せる寸前の段階にまできていると語っています。 「デザイナー・ベビー ゲノム編集によって迫られる選択」では、「遺伝子技術」と「生殖医療」のふたつが、将来の社会で密接に結びついていくと指摘し、将来的に生まれてくる子供の「遺伝子情報」は全て読み取ることができるようになると言っています。 さらには「遺伝子操作技術」が取り入れられるようになると、未来の人々は「好ましい遺伝子」を自由に組み込んだ「デザイナーベビー」を作ることが可能になるとも言っています。
「デザイナーベビー」を実現させる方法としては、体外受精させた受精卵の遺伝子情報を読み取ることから始まります。この遺伝子情報をコンピュータのデータベースと結びつけ、データベースに照らし合わせて、遺伝子の変異が原因で起きる単一遺伝子疾患の有無を明らかにして、これによって重度の病気を発症するリスクの有無が分かります。次に、複数の遺伝子が環境的な要因とあいまって病気を引き起こす多因子疾患のリスクが明らかになります。わかった情報をベースに、遺伝子をデザインします。
さらに「遺伝子組み換え技術」によって、変異遺伝子や疾患感受性の高い遺伝子を最初から正常な遺伝子に修復するということが可能になれば、容姿や才能に関わる遺伝子操作も可能になるかもしれません。そうなれば、身長や体重のほか、髪・肌・瞳の色、運動能力や芸術の才能などに関わる遺伝子の正体がどんどん明らかになり、それらの「好ましい遺伝子」の導入によって、身体的特徴や生理的性質などを理想どおりに操作できるようになる未来が考えられます。
「デザイナーベビー」の誕生が現実となれば、懸念されるのが倫理的問題です。まず、治療目的でない遺伝子の強化にどの程度技術が使われるかが問題となります。正の優生学が支持されて、生殖細胞系列の遺伝子を計画的に改変し、有利な形質の遺伝子を人工的に選択するという方向に進む危険性があるからです。
もしも、正の優生学プログラムを原理的に受け入れることになった場合、「どのような形質が有利なのか、誰が決めるのか?」「どのようなプログラムを実行するのか、誰がどのように決めるのか?」「財力によって左右されるのか?」など、倫理的な問題が多く発生します。
また、正の優生学に基づき「デザイナーベビー」が誕生すれば、特殊な才能に恵まれたデザイナーベビーによる特権階級が生まれ、社会をリードし、遺伝子操作を受けてない人との間に格差が生まれることになるだろうと予想されます。生殖医療の便宜的な利用拡大には、今後、幅広い議論を重ねることが必要でしょう。
What is this site?私は遺伝子治療に関心を持ち、いろいろと独学中の看護師です。現在難病と言われている病気はなんらかの形で遺伝子の異常や特性が関係していることがわかってきています。その遺伝子の問題ある部分に直接働きかけることによって病気を治すのが、遺伝子治療です。そのしくみと実際の治療法について私が知る範囲でご紹介していきたいと思います。今後も勉強しながら、新しい情報を追加していこうと思っています。 本サイトへのお問い合わせは、genefuture55525@excite.co.jpまでお願いいたします。