日々の生活で、さまざまな出来事により気持ちが落ち込むことがあります。しかし、数日もすると回復し、頑張ろうと思えるようになります。ところが原因が解決しても気持ちが落ち込んだまま、いつまでも回復しないことがあります。このような状態が続き、普通の生活を送るのが難しくなったりすることを「鬱病」といいます。
鬱病の原因は明確には分かっておらず、さまざまな可能性が考えられています。脳の神経の情報を伝達する物質の量が減るなど脳の機能に異常が生じている、その人がもともともっている鬱病になりやすい性質、ストレスやカラダの病気、環境の変化など生活の中のさまざまな要因が重なって発病すると考えられているのです。治療としては、十分な休養による心と体の疲れを取ることと、薬物療法によって神経伝達物質の異常を改善することが主なものとなり、他に「精神療法」や「電気痙攣療法」などがあります。
医学誌の「Science Translational Medicine」の研究で、「p11」という名のタンパク質の欠乏が鬱病における重大な役割を果たしていて、ネズミと人間の脳細胞実験でこのタンパク質を生成する遺伝子を治療することで、鬱病の経過に影響を及ぼすことができることが発見されたとの報告がありました。
「鬱病のような心理学的な障害は、最近ますます「脳の疾患」であると考えられています。実際にそうだとすると、p11タンパク質の量を正常に戻すことで、鬱病が改善しうると考えられます」と、研究論文の執筆者でニューヨークのワイル・コーネル医科大学のマイケル・カプリット氏は述べています。カプリット氏の研究チームは、抗鬱症状を持つネズミを治療する方法を研究しており、実験では、いったん治療を受けた「鬱ネズミ」は健康なネズミと同じように振る舞うようになったとのことです。
既存する鬱病治療薬は、セロトニンという脳のホルモン量を調節することを目的にしていますが、この研究結果は、既存の遺伝子治療技術と組み合わせることで、鬱病の治療法や治療薬の選定に新しい方法を示すものとなったようです。このことにより、p11タンパク質が鬱病に大きな影響を持つものだということがわかってきました。今後、さらに研究が進めば、遺伝子治療を包含した鬱病の新しい治療技術が確立されるかもしれません。早く使えるようになってくれるといいですね。
What is this site?私は遺伝子治療に関心を持ち、いろいろと独学中の看護師です。現在難病と言われている病気はなんらかの形で遺伝子の異常や特性が関係していることがわかってきています。その遺伝子の問題ある部分に直接働きかけることによって病気を治すのが、遺伝子治療です。そのしくみと実際の治療法について私が知る範囲でご紹介していきたいと思います。今後も勉強しながら、新しい情報を追加していこうと思っています。 本サイトへのお問い合わせは、genefuture55525@excite.co.jpまでお願いいたします。